アベノミクス「三本の矢」の一つに金融緩和策があり、日銀は「量的・質的金融緩和」を実施しておしております。マネタリーベースで年間60兆~70兆の増加目標で金融市場調整を行っており、その結果ご承知の通り日経平均株価は高値を更新し続けており、又そうした緩和マネーは不動産市場にも流れ込んでおります。現在の円安に伴い海外投資家は日本の不動産に目を向けて買っている状況で、その様な資金は都市部に集中しております。その為に商業地の地価は上昇に転じ一部地域に置いてバブル状態にあると思われます。日経新聞によりますと金融機関の不動産向け融資がバブル期を超え過去最高になったとの報道があり、特に地方銀行、信用金庫の増加が顕著であり、人口減少や工場の海外移転で融資先を発掘しづらくなり不動産向け融資を増加させているとの事である。その様な要因により、現在では不動産投資が過熱しており、今後の推移を注視する必要があるようだ。
今月号では京都市における、地価に影響する市場動向について触れてみたいと思います。
【京都市不動産市場の動向】
京都市においては、古都京都、観光都市としてのブランド力、都市圏に比べて価格面で安い点が人気となり、分譲マンションの新築ラッシュとなっております。特に市中心部の通称「田の字地区」では高級マンションが建築されており、首都圏に住む富裕層のセカンドハウスとして需要が増加しております。又東京や上海と比較しても価格が安い為に海外の富裕層も注目している状況です。
当然ながら住宅が売れれば、家具、電化製品も売れる為に百貨店、家電量販店の売上も増加しているとの事であります。
一方、京都市に訪れる観光客数も2014年度に5564万人となり過去最高となった。外国人宿泊客数も6割増加し、消費額も過去最高を達成しインバウンドの効果が顕著に表れている。
その為に京都駅前の一体開発、観光地の整備等々の事業計画が目白押しである。
日経新聞によると観光客増加の影響は地価にも現れており、土産物店の多い祇園の公示価格が7.6%上昇するなど、東山区内の11地点全てで上昇している。
観光客が増加すると「爆買い」等活発な消費で店舗の売り上げが増加し、その場所のテナント需要が高まり、賃料が上がり、空室も減少する。その為にビル所有者の賃料収入が上がり土地の収益性が向上する事により地価を押し上げる。
海外の旅行雑誌で京都が観光都市ランキング1位となっており、今後益々海外からの観光客が増加し観光地の地価を押し上げて行く事になります。
【宿泊施設の不足】
京都への観光客は増加しているが、残念ながら宿泊施設の供給が観光客増加に追いついていないのが実情である。京都へ訪れる観光客は京都でホテルが確保出来ずに、滋賀、奈良等の他府県に流れているのが実情である。京都のホテルの稼働率は軒並み90%を超えており、門川市長も逼迫する宿泊市場の需給を改善すると明言されております。
現在世界的な名門ホテルであるフォーシズンホテル等の数社が京都への進出を決めている。又インバウンド効果に注目し不動産投資信託(LEIT)も宿泊特化型ホテルへの投資を活発化させており京都でも1件の取得が決まっているとの事であります。しかしながら急増する需要には到底追い付けず、当面宿泊施設の供給不足は続くものと思われます。
政府も地公体も挙って外国観光客の誘致を推進しており、外国人観光客は増加の一途となっております。それに呼応するように、個人の旅行客向けの短期部屋貸しと言う手法で、この成長市場を獲得したのがAirbnb(エアビーアンドビー)である。
現在京都の観光地周辺でも空き家(戸建の京町家等)、空き室(賃貸マンション)を短期貸し(ゲストハウス等)への転換を運営事業者が積極的に進めておりますが、貸主側の事情で進んでいないのが実情である。
弊社にも募集中の貸家、貸し室をゲストハウスとして借りられないかとの、問合せが多くあります。しかし現時点では殆どお断りをしているのが現状です。その理由は、家主様が不特定の外国の方が利用される点、周辺住民とのトラブルを懸念される点が問題視されているのがその理由です。
しかし、空き家・空き室と言う難問を抱える賃貸市場にとって、無視するには余りにも魅力が大きい市場である。
今後は運用する不良業者の淘汰と、新たなルールを確立する事が必要である。
今後も利用者の拡大は続き、供給が暫く追いつけないと思われますが、旅行者の安全、安心な宿泊施設を増やしてゆく事は必要不可欠である。
【空き家の増加】
現在全国的に空き家の増加が社会問題化しておりますが、京都市でも同様に空き家が増加しており京都市都市計画局に空き家対策課を創設し対策に積極的に取組んでおられます。
国においても平成27年2月に空き家対策特別措置法が施行され、倒壊の危険などがある「特定空き家」の所有者が必要な改善措置を取らない場合行政代執行で撤去できる対策を講じている。
その為に、空き家を専門業者が管理するサービスを利用する人が増えてきた。
留守宅管理サービスとは、毎月1回~3回空き家を見回り、ゴミの不法投棄はないか、外部から侵入された形跡はないか、草は生えていないか、雨もりはないか等々の確認業務とゴミ処理、水道通水、通風等々実施の作業を行い依頼者に定期的に報告するものです。
空き家の増加に伴い、当該サービスを実施する業者が続々と当業に参入しており、その業者の中には「綜合警備保障」「大東建託管理」「住友不動産販売」「三井不動産リアルティ」「日住サービス」「東急リバブル」等大手の進出も急増中である。
尚、弊社においても当該業務を開始しました。
とまと空き家管理サービス「www.homemate-kyoto.com/」
今後も空き家が増加する事は明らかであり、それに伴い当該サービスも増加して行くものと思われます。
【まとめ】
京都市では、景観計画を策定、京都の歴史的な景観を保全するために実施されております。
わが国を代表する歴史都市・京都は,1200年を超える悠久の歴史の中で,山紫水明と称えられる豊かな自然と,数多くの歴史的資産や風情ある町並みとの融合により,地域ごとに特色ある景観を創り出し,また,それらが一体となることにより京都らしい奥深い景観を育んできました。 そして,平成16年12月に我が国初の景観に関する法律である景観法が施行され,良好な景観の形成に関する各種制度の活用が可能になる中で,京都市では,この優れた景観を守り,育て,つくり,そしてこれらを生かしていくため,景観づくりに関する総合的な計画として,平成17年12月に京都市景観計画を策定した。
その後、京都市は歴史・ものづくり・大学・環境都市等様々な顔を持った都市であり優れた文化を創造する文化都市として発展させようとして新景観計画が平成19年に策定されました。
その主なものは、建物の高さとデザイン、屋外広告物の見直しであります。
時あたかも、2020年に東京オリンピックを控えインバウンド全盛期、国土交通省観光庁では京都を下記の通りの位置付けをしました。
京都は、国内の一観光地域にとどまらず我が国を代表する国際的な観光地として重要な役割を担っており、訪日観光をプロモーションする際のコンテンツとして大きな役割を担っています。また、訪日外国人旅行者を多数受け入れる国内有数の観光拠点となっており、訪日外国人旅行者の満足度を向上させリピーターを増加させるとともに、訪日旅行の評判を高めるためには、京都における受入環境の整備促進が必要不可欠となっています。 これを踏まえ、訪日旅行の代表的な観光地である京都市と観光庁とが連携を密にし、外客誘致活動等に取組むための共同プロジェクトとして、「観光立国・日本 京都拠点」を京都で実施することとしている。
今後は京都を世界有数の観光都市として成長させようとするものであります。その事を踏まえ、京都に住むものとしての対応が必要であると考えます。
今後も皆様方のお役に立てる情報をお届け致します。
とまとハウス 代表者 粟野 則夫
宅地建物取引主任者・不動産コンサルタント技能者
ファイナンシャルプランナー・賃貸不動産経営管士
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